「鬼は外、福は内」。
そんな元気な声が聞こえてくる節分が今年も近づいてきました。
私たちが豆まきで追い払う「鬼」ですが、実は丹後地方には鬼にまつわる話が数多く残されています。
今回は節分を前に、ミステリアスな丹後の鬼伝説と、一度は訪ねてみたい丹後の鬼にまつわるスポットをあわせてご紹介します。
≪目次≫
日本最古の鬼退治!異形の鬼・土蜘蛛伝説

丹後に伝わる鬼の系譜において、最も古く、かつ壮大なスケールで語られるのが土蜘蛛「陸耳御笠」伝説です。
時は第10代崇神天皇の御代。
丹後の青葉山を拠点に、朝廷の命に従わず、不思議な術や圧倒的な身体能力で一帯を支配していた鬼、陸耳御笠(くがみみのみかさ)と疋女(ひきめ)という土蜘蛛の一族。この「まつろわぬ(朝廷に従わない)民」を討伐するため、都から武勇に名高い日子坐王(ひこいますのみこ)が送り込まれます。
しかし、陸耳御笠や疋女を始めとする鬼たちの抵抗は凄まじく、王の軍勢に追い詰められてもなお、陸耳御笠は山々をまたぐような人外の脚力で、由良川沿いから宮津、与謝野へと丹後を縦横無尽に駆け抜け、決死の逃走劇を繰り広げます。
仲間を失いながらも、陸耳御笠は執念深く山々を駆け抜け、日子坐王の追撃をかわし続けます。そして彼が最後に逃げ込んだ場所こそ、険しい岩壁と深い霧に包まれた大江山でした。そうして、山中の洞窟へと姿を消した土蜘蛛「陸耳御笠」。
この「日本最古の鬼」が大江山の闇に消えたことで、この山は「鬼が棲む場所」として人々に深く恐れられ、のちの三上ヶ嶽の鬼伝説や酒呑童子伝説にも繋がる事になります。
巨岩「立岩」に眠る、三上ヶ嶽の鬼伝説

かつて「三上ヶ嶽(みかみがたけ)」と呼ばれた大江山に三匹の鬼、英胡(えいこ)・軽足(かるあし)・土熊(つちぐま)が棲み、里を恐怖に陥れていた時代。討伐に立ち上がった麻呂子親王(まろこしんのう)が戦勝祈願に大社に立ち寄ると、伊勢の神の化身である老人が現れ、「この犬が道案内をいたします」と一匹の白い犬を差し出しました。
激しい合戦の末、鬼たちは山の奥深くへと逃げ込みますが、白い犬が掲げた鏡が暗闇を眩く照らし出し、潜んでいた鬼たちの姿を暴き出したのです。逃げ場を失った英胡と軽足は官軍の手によって討たれ、最後の一匹・土熊は現在の竹野(間人)の地で生け捕りにされました。
麻呂子親王は、後世への証拠として土熊を地の底へと封じ込めます。その際、鬼が二度と這い出せないよう蓋をした「巨大な封印の柱」が、今現在も間人の海岸にそびえ立つ巨大な一枚岩「立岩(たていわ)」です。
今でも日本海が荒れ狂う夜には、岩の底から閉じ込められた土熊のすすり泣く声が、潮騒に混じって聞こえてくると語り継がれています。
日本最強の鬼が棲む場所「大江山」と酒呑童子伝説

丹後地方にそびえる大江山。
ここは古くから、都を脅かす鬼たちの本拠地として恐れられてきました。その頭領こそが、日本最強の鬼・酒呑童子(しゅてんどうじ)です。
一説では、酒呑童子は元は人間で「外道丸(げどうまる)」と呼ばれた絶世の美少年だったという説があります。あまりの美しさに多くの女性から恋文を寄せられましたが、それを全て焼いてしまったところ、女性たちの怨念の煙にまかれ、恐ろしい鬼の姿に変わってしまったというのです。
鬼へと変貌を遂げた彼は、都を離れ、各地を転々とした後に、険峻な要塞・大江山を根城に定めました。そこで彼が築き上げたのは、全国から猛者たちが集まる「鬼の城」。力こそがすべてを支配する世界で、酒呑童子は圧倒的な武力とカリスマ性によって、数多の鬼たちを従える絶対的な頭領へと君臨したのです。
その規格外の強さを物語るのが、与謝野町の「与謝二つ岩」に残る伝承です。酒呑童子が弁当の石粒を放り投げたところ、山を越えて巨大な岩となり突き刺さったという、豪快な伝説が残っています。
圧倒的な強さを誇る一方で、無類の酒好きとしても知られた酒呑童子は、酒好きが災いし、最後は毒酒に酔ったところを源頼光らによって討ち取られてしまいました。
そんな伝説の鬼の名をブランドに掲げているのが、宮津市にあるハクレイ酒造の地酒『酒呑童子』です。最強の鬼の如く、力強くもキレのある味わいは、節分の夜を彩る一杯にぴったりです。伝説の地に思いを馳せながら、今宵は丹後の美酒で乾杯してみませんか。
「鬼滅の刃」の世界がここに?神谷太刀宮の「神秘の磐座」

次にご紹介するのは、これまでの鬼伝説とは少し趣が異なる、現代の「鬼ファン」からも熱い視線を浴びるスポットのご紹介です。
京丹後市久美浜町にある神谷太刀宮(かみたにたちのみや)。
ここには、まるで巨大な力を持つ者が一刀両断したかのような、神秘的な「磐座(いわくら)」が鎮座しています。
高さ約5メートルもの巨岩が中央から見事に真っ二つに割れたその姿は、世界中で大ヒットを記録している人気アニメ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が修行中に斬った岩にそっくりだと話題になり、新たな「鬼の聖地」として注目を集めています。
古代の祭祀場であったとも、太陽観測装置だったとも言われるこの岩。鬼のような凄まじい力、あるいは鬼を退ける神聖な太刀の勢いを感じさせるその佇まいは、訪れる者の心を震わせる、丹後の隠れたパワースポットです。
「豆まき」をしない村と、幻の「薦池大納言」

今までは鬼を退治するお話でしたが、丹後にはあえて「鬼を追い払わない」という、全国的にも珍しい場所が存在します。それが、伊根町の山間にある薦池(こもいけ)地区です。
全国各地で「鬼は外!」という声が響く節分の夜、この地区では古くから豆まきをしないという独自の風習が守り続けられています。その理由は、この地の庄屋さんと鬼との間に交わされた「約束」にあります。
昔、この地の庄屋さんが吹雪の中、道に迷い倒れてしまいました。そこへ突如として現れ、力強い腕で庄屋さんを救い出したのが、一匹の鬼だったのです。庄屋さんは、自分を救ってくれた「異形なれど慈悲深い存在」に、深く感謝しました。
助けられたお礼をしたいと申し出る庄屋さんに、鬼はこう願いました。「それならば、村で豆まきをするのをやめてほしい。豆は鬼にとって痛く、辛いものなのだ。もしその約束を守ってくれるなら、私はこの村を火事から守ってやろう」
庄屋さんは村へ戻ると、鬼の優しさと願いを皆に伝えました。村人たちも命の恩人である鬼の言葉を受け止め、以来、薦池では節分時期、豆まきが行われなくなりました。鬼もまた約束通り、この地区を恐ろしい火災から守り続けていると伝えられています。

そんな鬼との絆が息づくこの地で育てられているのが、幻の小豆「薦池大納言(こもいけだいなごん)」です。
一般的な小豆の約2倍という、まさに鬼のような規格外の大きさを持ち、この土地以外で育てると元の大きさに戻ってしまうという不思議な特徴があります。
この地だけで規格外の大きさを保ち続ける不思議な小豆。それは単なる土壌の影響なのか、それとも、今も村を火事から守り続けている「鬼」との深い繋がりが、その一粒一粒に宿っているからなのでしょうか……。
「鬼を退治する」のではなく「鬼への恩を忘れず、約束を守り抜く」。そんな誠実な物語を知ると、丹後の鬼伝説がより一層、人間味あふれる神秘的なものに感じられます。
そんな「鬼の里」の優しさと力強さが詰まった「薦池大納言(こもいけだいなごん)」。
生産量が極めて少なく、地元でもなかなか手に入らない「幻の小豆」は、こだわり市場でご購入いただけます。
ぜひその一粒一粒に宿る伝説を味わってみてください。





