京丹後の酒蔵めぐりにもう一か所、ぜひ足を延ばして訪れたいのが、伊根町の「向井酒造」です。
伊根の舟屋が立ち並ぶ海沿いにある向井酒造は、宝暦4年(1754年)創業の歴史ある酒蔵。
「海に一番近い酒蔵」ともいわれる向井酒造は、海と舟屋の風景がすぐそばにあり、伊根ならではの景色の中で酒造りを続けています。
今回は、そんな向井酒造さんのおすすめのお酒と、伊根の街並みをご紹介したいと思います。
≪目次≫
向井酒造の代表銘柄「伊根満開」

向井酒造を訪れたらぜひ味わってほしいのが、代表銘柄の「伊根満開(いねまんかい)」です。
伊根町で復刻栽培された古代米「紫黒米(しこくまい)」を使った、鮮やかな赤色が特徴のお酒。甘酸っぱく爽やかな味わいで、まるでロゼワインのような印象も受けます。冷やして楽しむのはもちろん、ロックやソーダ割り、さらに燗酒でも楽しめる、ちょっと個性的な日本酒です。

そして、もうひとつ注目したいのが「伊根満開にごり生酒」。
こちらは、通常の「伊根満開」に濾したもろみを加えて仕上げた、数量限定のにごりタイプのお酒です。グラスに注ぐと、赤米由来の美しい色合いと、にごりならではのとろりとした質感が楽しめます。味わいは、やさしい甘味と爽やかな酸味、ベリーを思わせる甘酸っぱさが魅力。通常の「伊根満開」とはまた違った、ジューシーでフルーティーな味わいを楽しめます。
日本酒というより「大人の果実酒」のような感覚で楽しめるので、「日本酒は少し苦手」という方にも一度試してほしい一本です。冷やしてそのまま味わうのはもちろん、ソーダ割りなどで楽しむのもおすすめ。
ただし、生にごり酒は要冷蔵の商品。温度によって味わいが変化しやすいため、購入後はしっかり冷蔵保存することが大切です。
「伊根満開」という名前を持ちながら、全く異なる表情を見せてくれる2つのお酒。一つの酒蔵から生まれる2つのお酒を飲み比べてみるのも、向井酒造を訪れる楽しみのひとつです。
個性的なお酒「伊根町 夏の想い出」

向井酒造には、その名前からして夏にぴったりな日本酒があります。その名も、「伊根町 夏の想い出」です。
このお酒の大きな特徴は、白麹を使っていること白麹は焼酎造りなどで使われる麹で、クエン酸による爽やかな酸味を生み出します。少し琥珀がかった色合いも印象的で、日本酒でありながら、一般的な日本酒とはひと味違う、甘味と酸味の個性的な味わいを楽しめる一本です。
冷やしてそのまま味わうのはもちろん、ロックやソーダ割りにして楽しむのもおすすめです。暑い夏の日、氷を入れたグラスに「夏の想い出」を注ぎ、シュワッとソーダで割って、ゆっくり味わう。そんな飲み方をすると、名前のとおり、夏のひとときを思い出させてくれるようなお酒です。
さらに面白いのが、燗でも楽しめること。温めることで酸味と甘味がより引き立ち、冷酒とはまた違った表情を見せてくれます。

実はこのお酒、杜氏の向井久仁子さんが平成11年に初めて造ったお酒を現在まで大切に眠らせている、思い入れのある一本でもあります。「夏の想い出」という名前には、単なる季節感だけではなく、造り手自身の酒造りの原点となる想い出も、込められているのかもしれません。
舟屋の町と一緒に楽しむ酒蔵めぐり

向井酒造を訪れたら、お酒だけでなくぜひ伊根の町並みも歩いてみてください。
海と舟屋が織りなす独特の景観を眺めながらゆっくりと散策し、旅の思い出に、お気に入りの一本を選ぶ。そんな時間を過ごせば、ただお酒を買うだけではなく、まさに「伊根という町を味わう旅」になります。
海を眺めながら味わう「伊根満開」や、お土産に持ち帰って楽しむ「伊根満開 にごり生酒」など、どれも伊根の風景を思い出させてくれるような個性豊かなお酒ばかりです。

青い海を眺めながら、伊根の舟屋を歩いたあとに、夕暮れの涼しい風を感じながら冷たい「夏の想い出」を一杯――。
そんなふうに過ごす時間は、日本酒の味だけでなく、そのとき見た景色や、一緒に過ごした人、その町の空気まで深く心に残してくれます。「伊根満開」や「夏の想い出」を手に、丹後の酒蔵を巡りながら、心と味覚に響くお酒を見つけてみてください。
向井酒造のお酒の魅力をたっぷりお届けした「伊根編」はここまで。
次回はいよいよ最終回!京丹後の酒蔵巡りにぜひ加えてほしい、宮津市・丹後由良にある「ハクレイ酒造」へ足を延ばします。どうぞお楽しみに!



